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200万円を超える海外送金の報告義務 その5 金額要件が100万円に減額されます

最近の金融危機以降、本ブログにアクセスされる方が増えています。海外の預金保護や格安航空会社の紹介などの記事が記載されているので、初めてご覧いただいた方はとまどわれるかもしれませんが、本ブログの本来のテーマは、海外直接投資をされている方(日本にいながら海外の金融機関で運用したり、あるいは自ら海外居住者となって現地で運用している方)への情報提供です。今後、情勢の変化によっては、香港やシンガポールで運用したいというニーズが増え、第二次海外預金ブームが来るかもしれませんが、海外直接投資に必要な知識は非常に多いので、海外直接投資をされる前に、本ブログの過去の記事にざっと目を通しておかれることをお勧めします。

さて、朝日新聞のネット版(2008年10月18日)に、「個人投資家の海外投資申告漏れ、216億円に 国税庁」という記事が掲載されていました。記事によると、「海外の証券や不動産などに投資する個人投資家らが、今年6月までの1年間に国税当局から総額216億円の所得の申告漏れを指摘されていたことが分かった。国内の低金利で海外への個人投資は増加傾向にあるが、日本の国税当局に取引状況などを把握されにくいと考え、安易な税逃れに走りやすいようだ。」とのことです。
記事全文はこちら

同記事の最後に、「ただ、国内の金融機関は今年から100万円を超える海外との送受金の記録を国税当局に提出することが義務づけられた。」という記載がありました。

本ブログの過去の記事で、海外送金の報告義務に関して、「①200万円超という金額の引下げはあり得る。②引下げられる場合の金額は100万円超になる可能性が高い、と思われます。」という予想をしましたが、現実にそのようになったようです。予備校であれば、「ズバリ的中」などと宣伝するのでしょうか?

海外送金の報告義務が発生する金額の根拠となっている法令を調べるのは、非常に手間がかかったのですが、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行令」(←長い名前)の第8条第1項です。

<改正前の条文>
(国外送金等調書の提出を要しない国外送金等の上限額)
第八条  法第四条第一項に規定する政令で定める金額は、二百万円とする。

この条文を改正するための政令が制定されています。

「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行令の一部を改正する政令」(←さらに長くなっている。)です。

内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行令(平成九年政令第三百六十三号)の一部を次のように改正する。

第二条第一項第三号中「商工組合中央金庫」を「株式会社商工組合中央金庫」に改める。
第八条第一項中「二百万円」を「百万円」に改める。

附則 (平成二〇年四月三〇日政令第一六三号)
1  この政令は、平成二十年十月一日から施行する。ただし、第八条第一項の改正規定及び次項の規定は、平成二十一年四月一日から施行する。
2  改正後の内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行令第八条第一項の規定は、平成二十一年四月一日以後にされる内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第三条第一項に規定する国外送金等について適用し、同日前にされた同項に規定する国外送金等については、なお従前の例による。

附則に書かれている内容と新聞記事の内容に齟齬があるようなので、若干の検討をくわえてみたいと思います。

(続く)

<過去の関連記事>
ご存知のように、日本の金融機関(郵政公社を含む。)から200万円超の海外送金をした場合には、当該金融機関から所轄の税務署宛てに海外送金調書が送付されます。日本の税務署が、海外の金融機関に預けてある資産を調査することは(不可能ではないにしても)かなり困難ですので、税務署側から見ると、日本から海外に向けて送金した段階で、資産を捕捉できなければ適正な課税は非常に困難となります。

200万円を超える海外送金に関する調書の提出の根拠条文は以下のとおりです。読みづらいので、重要な文言に下線を付しました。

内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律
(国外送金等調書の提出)
第四条 金融機関又は日本郵政公社は、その顧客・・・が当該金融機関の営業所等又は郵便局等を通じてする国外送金等(その金額が政令で定める金額以下のものを除く。)に係る為替取引を行ったときは、その国外送金等ごとに次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める事項を記載した調書(以下「国外送金等調書」という。)を、その為替取引を行った日として財務省令で定める日の属する月の翌月末日までに、当該為替取引に係る金融機関の営業所等又は郵便局等の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない。
 一 国外送金の場合 その国外送金をした顧客の氏名又は名称、当該顧客の住所、その国外送金をした金額、その国外送金に係る前条第一項の告知書に記載されている送金原因その他の財務省令で定める事項
 二 国外からの送金等の受領の場合 その国外からの送金等の受領をした顧客の氏名又は名称、当該顧客の住所(国外からの送金等の受領がその者の本人口座においてされた場合には、住所又は当該本人口座が開設されている金融機関の営業所等若しくは郵便局等の名称及び所在地並びに当該本人口座の種類及び番号)、その国外からの送金等の受領をした金額その他の財務省令で定める事項
→国外から送金を受領した場合にも、金融機関から税務署長への報告義務はありますので注意が必要です。
→「その金額が政令で定める金額以下のものを除く。」という柱書きの文言は、「二 国外からの送金等の受領の場合」にもかかりますので、国外からの送金を受領した場合にも、200万円を超えなければ、金融機関等は所轄税務署長に国外送金調書を提出する必要はないことになります。
この条文を見ると、「その金額が政令で定める金額以下のものを除く。」と規定されていますので、200万円という金額は法律ではなく、政令で定められているものに過ぎないということが分かります。

200万円という金額を定めているのが、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行令」の第8条第1項です。
(国外送金等調書の提出を要しない国外送金等の上限額)
第八条  法第四条第一項に規定する政令で定める金額は、二百万円とする。

問題は、この200万円という金額が下げられる可能性ですが、この点については次回以降に検討したいと思います。

200万円を超える海外送金(又はその受領)については、金融機関(郵政公社を含む。)から所轄税務署長への報告義務があります。

別に課税逃れをする目的ではなくても、そのような調書が税務署に送付されることを避けられるのであれば避けたいと思うのが通常でしょうから、200万円以下の金額で何回かに分けて送金すればよいのかという疑問が当然浮かびます。

結論的には、現行の法律上は、200万円以下の金額に分けて送金又は受領すれば、税務署長への報告は回避されます。ただ、海外資産の把握が困難なことからすれば、このような回避法が乱用されれば、当然、200万円という金額を引き下げることが考えられます。

以下、「Q&A改正外為法と海外投資の税務 株式会社ぎょうせい、山田煕編著」の記載を引用しながら検討します(以下、「」内は引用)。

まず、海外送金調書の提出が必要な金額が200万円に決まった経緯は、以下のとおりです。
「大口送金を200万円以下の複数の取引に分散して送金したようなケースについては報告する必要がなく・・・容易に報告義務回避を行うことができます。・・・このような抜け道に対しては、基準額を引き下げることにより対応することも可能ですが、報告基準額の設定に当たって当初100万円以上であったのを、金融機関等の反対により200万円超に緩和した経緯もあって、簡単に引下げというわけにはいかないと思います。」

海外送金は、個人の海外投資以外に、貿易業者その他海外取引でも頻繁に行われていますから、100万円以上で報告義務を課すことにより、金融機関等の事務処理が増えることは確かでしょう。ただ、書籍の発刊は1998年であり、その後、個人の海外投資が非常に増えているという事情およびこの書籍の発行後に米国でのテロが発生したという事情に鑑みれば、金融機関等から反対があるというだけで、引下げが簡単でないということはできないように思います。引下げや要件の厳格化が行われるかもしれないと考える具体的な理由は、以下のとおりです。

①現金での持ち出し及び持ち込みは、100万円超で申告が必要であるので、それとの整合性を図る。
②「アメリカでも、金融機関等に対して報告・記録保存義務が課されており、その額は1万ドル以上の取引である。」
→この金額は変更されている可能性があります。
③「米国では、金融機関が小口分散化を知っている場合には、金融機関に名寄せの義務がある旨の規定を設けています。また、刑罰面で、小口分散化による脱法行為に対しては、刑法上の間接正犯の考え方を立法化して、取引の相手方(注:送金を行った者のこと)を報告義務違反として処罰対象としています。」
④海外送金調書は電子媒体での提出も認められている(海外送金調書法第4条第2項)ので、コンピュータで管理すれば、金融機関側の事務処理の負担を軽減することは不可能でない。

以上の考察を前提にすれば、①200万円超という金額の引下げはあり得る。②引下げられる場合の金額は100万円超になる可能性が高い、と思われます。

また、米国では、金融機関に名寄せ義務を課していることとの関係で、金額以外の要件、例えば、年間の送金回数や送金総額を要件に加える可能性はあり得ます。
→米国では、間接正犯の理論を応用して、小口分散化した送金者本人を報告義務違反で処罰していますが、「小口分散」の定義が曖昧ですし、正確には間接正犯といえないので、送金回数を要件にするのが正しいと思います。

まとめますと、以下のような要件になると予想されます。
①金額要件は100万円超
②年間送金回数又は送金総額を要件に加える
③法人と個人で要件を変える
→あくまで予想ですので、このとおりになるかどうかは分かりません。
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コメント

PALCOMさんへ
 やはり200万円から100万円に減額されていたのですね。これで現金を持って香港に飛ぶ人がまた増えるのでしょう。
 こんな規制強化をするのではなく、東証に長期インデックス投資に耐えうるETFを上場し、かつ株式譲渡税および配当課税を減税・無税化すれば、放っておいても海外への個人投資家の資金流出は減少し、さらには日本のネット証券会社が英語に対応するようになれば海外投資家の資金も流入して株式市場が活性化するだろうというのは、素人考えでしょうか。
 以前、スイスのUBSに口座を開こうと考えてチューリッヒに電話したら、日本人の担当者が出てきて、日本人が口座を開く場合は2年以内に最低預金額2億円相当に到達することが口座開設の条件です、と言われたことがあります。さすがに最低預金額の高さにびっくりして口座開設は出来ませんでしたが、そのような条件でも口座を開設する日本人がいるのだな、と感心したことがあります。日本人富裕層の資金は確実に海外に流出しているのでしょう。
 話は変わりますが、残念ながら私はまだ現役で楽隠居ではありません。日本非居住者で、PALCOMさんのブログでも以前取り上げられたことのある海外の企業で働いています。前回、紛らわしいハンドルネームでコメントし、誤解を招いたようで申し訳ありません。これからも時々お邪魔させていただきますので、どうぞよろしくお願いします。

目指せ、鶯谷庵の楽隠居さん

勝手にリタイアされていると誤解してしまいました。

この金額要件の引き下げは予想できましたね。

海外金融機関を通じた脱税を防ぐために最低限の規制は止むを得ないのかもしれませんが、ご指摘のように、自国の投資環境を向上させ、資金が海外に逃げないようにすることが最大の解決策ですね。

100万円未満で送金する人が増えれば、さらに、煩雑な規制が行われるのでしょうか?なんだか、非生産的ないたちごっこですね。

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海外送金は100万円未満にする?

乙は、PALCOM さんのブログ http://palcomhk.blog79.fc2.com/blog-entry-673.html で知りました。 今まで200万円を超える海外送金が国税庁に報告されていたはずですが、朝日新聞 http://www.asahi.com/national/update/1015/TKY200810150283.html によれば、その金額が..


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